キクチ・ヒサシ

文化と芸術を言祝ぐ『コトバの塔』

レディオヘッド:A moon shaped pool

レディオヘッドライブ、オープニングに流れるインタビュー「自由とは恐れがないこと」ニーナ・シモンの言葉

2016/09/16

レディオヘッドのライブ動画をyoutubeで観ていると、最近のものは、バンドが登場するオープニングに、魅力的で面白いような雰囲気の声で、力強い言葉が再生されている。サマーソニック2016のステージでも同様に、その言葉が再生された。一体、あれは何だろうか、ラジオ?と思っていたが、ニーナ・シモンのインタビュー動画から抜粋されているようである。次のような言葉である。

インタビュアー「What’s ‘free’ to you?」
ニーナ・シモン「What’s ‘free’ to me? Same thing it is to you, you tell me」

インタビュアー「No, you tell me!」
ニーナ・シモン「It’s just a feeling, it’s just a feeling… / I'll tell you what freedom is to me – No fear! I mean really, no fear!」

インタビュアー「あなたにとって自由とは?」

ニーナ・シモン「わたしにとっての自由?同じことをあなたが教えて」

インタビュアー「ノー、あなたがわたしに教えて!」

ニーナ・シモン「それはただ感じることなの。それはただ感じるだけ。言うわ、わたしにとって何が自由か。恐れがないことよ。本当に言っているのよ、おそれがないことよ!!」

自由とは何なのか、ニーナ・シモンは、恐れのないこと、心配のないことだと言っている。非常に素晴らしい答えで、力強い彼女の存在感に魅了された。自由は、勝ち取るものでも、好き放題にすることでもなく、お金をたくさん持つことでもない。精神的次元での開放である、恐れのない心の状態である、ということなのだと思う。精神的葛藤や恐れがないことは、現在において、人を自由にする。このような哲学を現す言葉が、レディオヘッドのライブでオープニングを飾るのは、ふさわしい、かっこいい。美しい音楽の前で、わたしたちは、すべてのおそれを退け、喜びに踊る。このとき、まさに自由の中に在るのだ。わたしは、レディオヘッドのセレクトが気に入り、ニーナ・シモンが好きになった。フランクルが言う、精神世界に開かれている人間が強制収容所をよく耐えて生き残ったということにも共通している。いくつかニーナ・シモンの曲を聞いてみたが、あらゆるものを持たない(家も土地もお金も友人も何もない)わたしが歌われたあと、一体わたしに何があるのかと問い、存在することの富について力強く歌われていて、感動的であった。聞いていると前半は、ちょっと笑ってしまうようなおかしみがあるのだが、後半、生命の富について歌い上げるニーナ・シモンの歌声、その歌詞に負けていない存在感とパーソナリティの輝きに、気付けば涙を流しているという特別な時間、芸術の力に打たれた。

ニーナ・シモン「自由とは」

-レディオヘッド:A moon shaped pool