「陽射しからあなたへの物語」(2011)
2016/07/09
ねー、不思議だよね。夢を記録している話はしたっけ?してないね。さっき疲れて寝てたら、夢を見たんだよ。何だかね、うまく言えないんだけど、現実にいると気付いてからも、まだ夢が漂っていて、その中にいるとね、これまでの道のりを振り返っている自分がいて、何だか奇妙だったな。護られているという気もするのよ、うーん、振り返っている自分に何の片肘張った感じもなくて、寝転がっている心地良さの中で、ただ淡々と振り返っている、静かな水の上に浮かんでいるっていう感じ。ふふふ。今思い出したけど、朝目覚めて、ベッドの上で、何の演技もなく、腹から笑いがこみあげてくる感じの別バージョンかもしれないな、そのときは、ただベッドの上に寝転がっている自分がいる、ということが、それだけのことなのに確かにおかしくて、ついでに日々あくせくしている自分がおかしいような、そんな気持ちがしたよ。青森の病院で生まれたんだ。それからは、岩手県の遠野市で主に小学生をしていたよ。遠野物語を体育館で演じる取り組みがあってね、河童ものとか、おしらさまとかさ。むかしむかしあったずもな、どんとはれ、というやつで、あなたはきっと好きなような気がする。きめつけてたら、ごめんね。あー、なんだろうな、なんだったっけ?どわすれした。建築にも興味があるよ。それはね、どのように言葉の建築を行うのか、なんてことに走りそうになってきたので、方向転換するね、骨があるよ、骨組みがある。器官があり、内臓があり、皮膚がある。窓があり、開けたり閉じたりもできる。ああ、こういう方向に行ってしまう。おでこ、ぺちんしたよ、今。愛情を込めて、うっふっふー。クレーの展覧会、こないだ京都のやつを見逃したので、あなたに託すね。返事を今から書くよ。夜の中にいます。窓を開けて空を見渡すと、厚い雲が見えました。あの雲の裏側に、今日も星が輝いていると想像します。天幕の裏では、星が自由に行き交い、おしゃべりをしていると想像します。数千年と繰り返してきた営み、星空の下、男が手紙を書いています、数限りない言葉が交わされてきました、それらは、全て外に降り積もっている、と考え、胸に感じ、想像してみます。きっとそれは星のことだと合点します。一体、誰が、そのことを感受して理解するなどと、わたしは期待できたでしょうか。あなたはそれをしてくれましたね。ことばが好きだと言いましたね。洪水のような、意識の羅列のような、ぎゅうぎゅうに詰め込まれて、意味を超えた言葉の集まりは、生命の線です、音楽です、流星です。自然そのものを目指した色彩です。あなたが書いているように、それは祈りです。暗い産道を抜けてきました。幾つかの光が灯っていました。舟が流れていきます。常夜燈が灯っています。それらには意味がなく、実質はあり、美しく残酷で、意味を超えた風があります。そこに生命の線が走ります。手は美しく、実用的かつ伝統的で、大地を離れた寂しさと気軽さで、脚の横にぶらさがり、揺れています。手と手。こう書くのが好きです。手は重ね合わせ、つなぎ、触れることができます。何ということだろう、と思います。手をつなぐことができるなんて!果たして、頭で書かれた言葉と、手が書く言葉には違いがあるようです。手は何かを言いたがります、声を出してダンスを踊りたがります。わたしはそれを肯定します。あなたはそれらをまるごと包み込んでくれました。誰かにわかってほしいとわたしがどこかでおもうようななにかがあなたにはわかるのです、きっと。あなたがだれかにわかってほしいとどこかでおもうようななにかが、わたしにわかるのです、たぶん。わからないということをすたーとにしたうえで、なお、わかるといいたいようなしんぴてきなつながりのみょうです。てとてでわかります。つもりになっています。ほしのかけら。てがみはあなたのことをおもう、せいめいのせん。あなたがかいているようにこれがいのりなんだね。うまれてくれて、であえて、うれしい、ありがとう。ほしのかけら。ちじょうのほし。いいないいな、にんげんっていいなー、おいしいおやつに、ぽかぽかおふろ、あったかいふとんでねむるんだろうな、ぼくもかえーろおうちへかえろ、でんでんでんぐりがえしで、こんにちは。こんにちはっ。きれいなはながさいているよ。たのしいはなでもあるよ。でんでんでんぐりがえしで、こんにちは。こんにちわ。もしもし、こちらりんごです。りんご?ごりら、らっきょ。ハイタッチ!!てとて。
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こんにちは。わたくし、陽光です。陽射しです。あなたですか?たぶんあなただと思って、私は今書いています。私の場合、宇宙が爆発するのに、それそう応の時間が必要とされるようです。何について書いているのか、書こうとしているのか、というと、実はわかりません。手に任せるのみです。そうして、手を任せる、あらら間違った、手に任せるのはコワイことです。コワクないことです。グレン・グールドを毎日聴いていて思うのですが、聴いているとき、何も思わないです。ハロー、あなた。今、ステレオでは、ジョン・レノンが歌っています。曲名は、everybody loves youです。まちがいました。Nobody loves youだったと思います。なかなかLoveに満ちて、好きな曲です。さて、あなた。今これを私が書いていて、あなたが読んでいる。そういう重層性の中にいるね?いるよ。
さて、私はさっきから、さて、と書いています。これは気にしないでください。うそです。気にしてください。今日、雨が降りました。少しすずしくなりました。もー勉強をして、気分転換にさきほど、ワインを買いに行きました。ワインは、4本ほど買いました。そのとき、ワインに白いほーたいのようなものを店員は通し始めました。ビンがぶつかりあって割れるのを防止する為と思われましたので、私は、自分の手を差し出し、ここにも通して下さい、と言いました。女性店員、20歳くらいとおぼしきは、あっけにとられ、笑いながらも、本当に私の手に通そうとして、少々混乱しているので、「なんちゃって」と言うと、頬を赤らめました。その色はワインレッドを思わせ、などと今書きながら、おかしくなってきました。あなたに向けて書くということは、このように自由であることができる、ということなのですね、わたしが言う、いい人とは、そのような意味です。どのような意味なんだ、ときいて下さい。星のかけら。人々は昼でも星を見れる、ということを忘れています。それは、赤い星で、実は直視することはかなわないので、私はでたらめを言っている、と思われるかもしれませんが、ともかく、あなたにわたしが言いたいことは、あなたの読みたいことになると思います。などということさえ、ひとつの、ふたつのものがひとつになる意で、ひとつのヒントであり、これはこの三枚の便箋に記した生命の線をならべて、遠目に見てみるとこたえが浮かび上がります。あなたの為に、書きましょう。星が降る夜や昼や明け方の風のことを。永代に燃える常夜燈のことを。書き出すのには時間がかかるほーですが、もし、あなたの煌き、全身に走る輝きを生命の線にうつしかえることが私にできたら、そのときは、あなたの全身を愛し、ぎゅうぎゅうにかつやさしく抱きしめたのと同じことになります。星のかけら。Love。陽射しより。